不動産売却の流れ

不動産売却の流れ

「売却金額は一体いくらになるのか」「そもそも売れるのか」。不動産を売ろうと考えている人はきっと、様々な不安や疑問を抱えていることでしょう。そのひとつひとつの不安や疑問を解消するために、まずは、全体的な流れを把握して、正しい不動産取引を行いましょう。

ステップ1:売却計画を考える

売却目的、売却理由、スケジュールを整理します。「いくらの金額がいつまでに必要」などの条件を整理

売却する前に押さえておきたいこと

需要の低い別荘、温泉地の分譲マンション、いわゆる「原野商法」で 買わされた山林、原野など売却が難しい、もしくは売却が不可能な土地・建物について、所有者が「安くてもいいから処分したい」という心理につけこんで、「買い手がいる」「売ってあげる」「買い取る」などと言って近づく悪徳業者の詐欺的勧誘による被害は後を絶たない状況です。

信用できる地域の不動産会社を活用しよう

売却したい不動産を所有しているときは、まず、住んでいる地域の不動産会社、もしくは物件が所在する 地域の不動産会社に取引状況や売却の可能性等について尋ねてみてください。

不動産会社には、免許番号などを記載した「標識」を店舗や事務所の見える場所に掲示する義務が宅地建物取引業法で定められています。 それらを遵守している業者か否かといった点が目安になります。

また売却は難しいと回答された不動産を「買い取る」「売ってあげる」などと近づいてきた見ず知らずの業者(不動産会社とは限りません)の話は、詐欺の可能性が高いため絶対に聞いてはダメです。まず「お金を払ったら返ってこない」と思ってください。

閣議決定(2021.03.05)

所有者不明土地問題の解消に向けた民法や不動産登記法の改正案などが閣議決定しました。土地の相続登記の義務付け、一定の要件のもと所有権を手放せる制度の新設。(相続土地国庫帰属法)

売却計画を考える

あなたが不動産を売却する理由は何ですか?買換えのため、資産整理のため、相続発生のため、その他いろいろな理由があることでしょう。買換えであれば購入資金に充てること、相続であれば財産の分配等が目的になり、売却代金や売却期限に制限がかかってきますので、契約の判断や契約条件に影響を与えることになります。

①問題点を整理する

  • 買換えの場合

売却の目的を達成するための問題点を整理してみましょう。

新しく購入する物件の資金計画で売却資金から充当する予定金額や借入残債、売却・購入に係る仲介手数料、その他の諸経費等の綿密な計算はできていますか。 最低売却価格はどうしますか。

  • 相続の場合

遺産分割協議は完了していますか。売却計画に全員が同意していますか。売却の同意がある場合、売却代金、分配方法等について同意できていますか。注)売却について同意できていない相続人が1人でもいるときは、同意が得られるまで計画を進めることはできません

  • 生産緑地の場合

生産緑地の売却にはいくつもの条件が付きます。敷地境界は確定していますか。生産緑地の解除はできますか?相続税の納税猶予制度は利用されていませんか?特定生産緑地制度を理解されていますか?生産緑地の売却が相続を伴う場合には、納税までの期間が10カ月と短く、スケジュール管理が重要になります。

②売買方法を知る-公簿売買と実測売買

土地の売買契約には、①「公簿売買」 と②「実測売買」があります。

①は、土地の実際の面積を売買代金と関連させず、登記上の土地面積を売買対象として特定するために表示する売買です(清算なし)。

②は契約締結までに実測を行い、その面積によって取引を行う方法と、契約時は登記記録上の面積で売買代金を概算で決め、決済までに実測して売買代金を確定して清算する方法があります。 実測売買では隣地所有者と境界立会い、確認のうえで測量を行い、測量図を作成して買主に交付します。登記記録上の表示面積と実際の面積に差異がある土地は少なくありません。

どの方法で契約するかは最終的には話合いで決めることが望ましいでしょう。 なお、建物については、実際の面積と登記記録上の表示面積が相違していても清算することはしていません。

③トラブル防止を検討する

建物は、経過年数により相応に品質・性能が低下してくるのは当然のことです。それらの経年変化による建物の劣化現象とは別に、シロアリの害、 雨漏り、結露等による木部の腐食、不同沈下による傾き等の欠陥が引渡し後に発見されてトラブルになることが少なくありません。

土地・建物に欠陥があった場合の売主の責任を「契約不適合(担保)責任」(民法 562 条~564 条)といい、引渡し後に欠陥が見つかった場合、修補や減額等を請求されることがあります。知っている建物の不具合は告げておくことが大事です。

取引実務では、トラブルの防止のために「物件状況報告書」(売主の告知書)を作成して、買主に交付・説明しています。「売主は種類や品質等に関する欠陥があっても責任を負わない」とする免責特約も有効ですが、知っていて告げなかった欠陥は免責されません。逆に欠陥があっても、告知をしてそのままで受け取ってもらう了解をしてもらえば契約不適合(担保)責任を負うことはありません。

物件状況報告書」による告知は非常に大切であることを知っておきましょう。また国は、トラブル防止の施策として、建物状況調査⤴、②安心R住宅制度⤴を用意しています。任意の制度ですが活用も検討してみましょう。

ステップ2:専門家に相談

不動産会社に相談して、物件の市場流通性、物件の査定額、売却物件の商品化

不動産会社には守秘義務がありますので、相談者から提供された情報を承諾なく外部に漏らすことはありません。まだ売却依頼を決める前の相談ですから、開示したくない情報もあると思われますが、差支えのない範囲でできる限りの情報を提供して相談してください。

最初に知りたいことは、売却見込み価格や売却の見通し等ではないでしょうか。売却する不動産が、 取引の多い地域で、流通市場性が高い地域の物件であれば、①売却したい物件の情報(所在 •建物図面 •写真 •測量図等 •土地、建物に関する資料 •マイナス情報)、②売却目的、売却理由(買換え •相続 •資産整理 •その他の明確な理由)の情報を伝えることで、かなり高い確率でアドバイスをもらえるでしょう。

しかし、取引が少なく、流通市場性が低いと思われる地域の物件の場合は、さらに現地調査を行って判断することが必要になってきます。

価格査定をする

住まいの売却をする売主は「できる限り高く売りたい」と思い、購入する買主は、気に入った物件を少しでも安く手に入れたいと思うのは当然のこと。市場には取引される価格の相場がありますので、相場とかけ離れた価格では売却できません。まず、価格を査定してもらいましょう。

価格査定と鑑定評価

不動産の査定については、ほとんどの場合において不動産会社に依頼します。不動産会社では、机上で概算価格を算出する簡易査定も行いますが、売却を進める上では、実際の「売却見込み価格(不動産会社が周辺相場等を参考に算出して提示するものです。通常、価格査定は、サービスの一環として無料で行われます)」を算出する訪問査定が必要です。

鑑定評価基準に基づいた鑑定評価(不動産鑑定士が行う評価です。裁判での立証資料としての鑑定評価、遺産分割のための鑑定評価、担保物件の鑑定評価など公的な信頼性の高い評価額が必要な場合に利用されます。鑑定評価には数週間の期間と鑑定費用が必要になります。)は高額で、簡易な「不動産調査報告書」による評価もありますが、こちらも有料です。

Webサイトの「一括査定」は慎重に

売却情報収集のために様々な営業活動をしています。ネット社会になり、宅建業者でない多くの会社がネット上で「一括査定」を行っています。これらサイトの運営者は気軽に査定が申込めることを強調し売主情報の取得、地域の不動産会社にその売主情報を売ることが目的ではありますが、その情報が実際には売却をしない気軽な問合せも多く含まれているため、不動産会社の対応にも違いが出てきます。

不動産会社がする査定には大きく分けて二通りあります。それは買取価格とエンド価格です。買取価格は通常、一般の買い手には不向きな物件に対して、買取業者が提示する価格です。そして、エンド価格は一般の買い手が買うであろう価格です。

実際に売るか売らないか分からない軽い気持ちの一括査定で取得する売却情報に対して、忙しい会社の営業マンは真剣に取り扱わず、買取金額を提示することが多くなるのではないでしょうか。運よく提示した価格で話が進むようなら、時間も広告費もかけずに仲介手数料が稼げることが理由です。

売却査定は無料です。しかし真剣に売却を検討するのでしたら、一括査定ではなく地域の不動産会社に直接問い合わせする方が、不動産の売却が納得できるものになるのではないでしょうか。

取引におけるいろいろな価格

取引の流れの中での価格には、①売主の希望売却価格、②不動産会社の査定価格、③売出価格、④買主の購入希望価格、⑤契約価格があります。

最終的なその不動産の価格は⑤の「契約価格」ということになります。契約価格は契約交渉の中で決まります。不動産会社の「査定価格」は、業者により多少異なりますが、 周囲の相場を考慮して早い段階で売却が可能と思われる価格が提示されます。

売却の依頼を受けたいために後から他社より高い価格を提示する不動産会社もありますが、高いからと安易な判断をせずに信頼できる会社を選ぶことが大事です。売出価格は売却の目的・事情を考慮しながら不動産会社と相談して決めます。

売却を依頼する「 媒介契約を結ぶ

媒介契約には、①専属専任媒介契約、②専任媒介契約、③一般媒介契約の3種類があります。どの契約 を選ぶかは依頼者が決めます。

たくさんの不動産会社に依頼したほうが早く売れそうなので「一般媒介」が良いと思いがちですが、必ずしもそうではありません。「専属専任」「専任」の媒介は、必ずレインズに登録しますので、レインズ会員のすべての不動産会社へ提供されます。不動産会社は、日々レインズの売却情報をチェックして、物件を探している人に紹介していますので、早く買主を見つけることができます。専属専任・専任媒介を受けた媒介業者は売却に対する責任感が強く、より積極的に販売します。また、信頼できる 1 社に専任媒介等で依頼したほうが、煩わしさもありません。

※不動産会社は、媒介契約締結日から専属専 任媒介契約の場合が5日以内、専任媒介契約の場合が7日以内にレインズへ登録しなければなりません。

契約が成立したときの仲介手数料について

媒介業者の仲介手数料は成功報酬です。契約が成立しなかったときは報酬を請求することはできません。また、契約成立の有無にかかわらず、 販売活動に要した広告費等の経費を請求することはできませんので、請求されても支払う必要はありません。 注)ただし、依頼者から依頼した特別の広告に要した費用、遠隔地の交通費は負担が生じます。

仲介手数料には上限がある

宅地建物取引業法(以下、宅建業法)は、媒介業者が受け取ることのできる仲介手数料の額の上限を決め ていますので、媒介業者は、上限額を超える仲介手数料を請求することはできません。仲介手数料は、報酬告示で定められた金額以内の額を依頼者と媒介業者間の話合いで決めることになります。一般の取引においては、宅建業法が定めた上限額を仲介手数料とするのが通常です。

仲介手数料の支払い方法は

支払い方法に決まりはありません。 契約が成立したときに全額、または取引完了後に全額を支払うか、契約成立のときに半金、引渡しをして取引が完了したときに半金を支払うなど様々です。事前に媒介業者に確認しておくとよいでしょう。

不動産売買仲介手数料の本質

当社では売却に必要な仲介手数料は売買代金の3%+6万円という一律ではなく、売買代金の1%を基本料金とし、物件の種類や売却方法の違いにより必要となる費用は別途見積をした上でご負担をお願いしています。

このことは、昭和43年8月20日最高裁が判示した「報酬として当事者間で授受される金額は、その場合における取引額、媒介の難易、期間、労力その他諸般の事情が斟酌されて定められる性質のものと言うべきある」に則っております。また、平成15年3月に国土交通省が取りまとめた「不動産流通業務のあり方研究会」でも、不動産流通事業者はこのことを常に認識する必要があると述べています。

すなわち、仲介手数料は一律ではなく個別事案ごとに定めることが本質ということになります。

媒介契約の更新と媒介契約の解除

媒介契約の更新・・・・専属専任媒介と専任媒介の契約期間は3カ月以内となっています。契約期間内に売却できなかった場合は、互いの合意により更新することができます。その場合は、更新契約書を作成しますが、改めて、媒介契約書を交わすこともあります。媒介契約を自動更新とすることはできません。

媒介契約の解除・・・・契約を途中で解除したい場合、解除することはできますが、それまでの販売活動に要した広告費用等の経費の負担が生じることに注意します。売却中止の場合、費用を請求しないことも多いので事情をよく説明してください。媒介契約書の契約約款を必ず読んで、理解しておくことが必要です。

ステップ3:販売活動 

依頼を受けた不動産会社が販売活動を開始します。

不動産会社の業務

媒介業者は次のような業務を行い、契約の締結から取引の終了までのサポートをします。

見学者を迎えるための心構え

購入希望者が建物の見学(内覧) を希望するときは、担当者から事前に連絡がありますので、日時の調整をします。日時が確定したら、見学に来る購入希望者に良い印象を持ってもらうように準備をします。

台所、洗面所、浴室、トイレの水回りは特に気にする人が多いので丁寧に掃除しておきます。購入意欲が高ければ高いほど細かな部分の見学を希望しますから、押入の中なども整理しておきましょう。

買い手の方からの質問で多いのは、どういう人が近隣に住んでいるのか、ゴミ置き場や掃除当番、自治会があれば役員に関することなどがあります。また売却理由も買い手にとっては気になるところです、デリケートな内容になりますので、前もって不動産会社と相談し答えを準備しておきましょう。

販売状況がよくないときは

1カ月、2 カ月と販売活動をしても反響が少ない、他業者からの問い合わせもないなど、状況がよくない ときには、早めに原因を分析して対策を講じる必要があります。市場流通性が低い地域内にあることが原因であれば長期戦を覚悟することもあります。本来であればもっと反響が多くてもよい地域内の物件であるときには、はっきりした原因があるはずです。物件特性の問題なのか、販売価格が高すぎるのか、両方なのか、担当者と一緒に原因を分析して対策をとりましょう。手をこまねいていては何も進みません。

ステップ4:買い手からの申込と売り手の承諾

買い手の条件が記載された購入申込書を確認し、条件を付けて返答します。

購入の申込みと売却の承諾

購入希望者は、購入したい物件が見つかったときに、媒介業者に購入申込書を提出します。購入申込書に統一の書式はありませんが、一般的に購入申込書には次のようなことが記載されています。

①買付金額②手付金の額③住宅ローンの特約について④契約日・引渡日⑤取引する不動産の表示など

申込段階では、購入希望金額(買付金額)、手付金の額等の大まかな条件を示して、売主に購入の意思を伝えます。これに対し、売主は、「売渡承諾書」または「売渡証明書」を提出して売却を承諾する旨の意思を購入希望者に伝えます。

契約の交渉と契約の準備をする

購入申込書を受け取ったら、いよいよ契約の準備に入ります。契約成立に向けて具体的な契約条件のすり合わせをしていきます。売主と買主の希望条件が異なる事項については、媒介業者が公平な観点から取引の専門家としてアドバイスをしながら調整します

契約時に必要なものは媒介業者の担当者が指示しますので、それに従って準備します。

一般的には、①土地・建物の登記済証(権利証)または登記識別情報、 ②印鑑(実印 or 認印)、③手付金領収書、④仲介手数料等です。①の土地・建物の登記済証(権利証)は提示するだけです。 媒介業者が事前に確認をして、当日、買主に提示しないこともありますので、媒介業者の指示に従ってください。

登記済証(権利証)は大事な書類ですので引渡しの時まで自身で厳重に保管しておきます。印鑑は認印でも法律の効果に影響はありませんが、実印で押印するのが一般的です。手付金領収書は、通常、媒介業者が用意します。 また、媒介業者は犯罪収益移転防止法により売買契約当事者の本人確認を行うことが義務付けられています。運転免許証等の身分証明書の提示等に協力してください。

 

ステップ5:売買契約

買主と売主の契約条件を不動産会社が調整を行い、売買契約の締結

売主と買主が契約を結ぶ

契約書にサインする前に、もう一度契約内容の確認をします。

通常は、 媒介業者が契約書を読み上げて、読み合わせにより最終確認をしています。この確認は、契約条件について合意した内容が契約条項となっていることの最終確認であり、契約条件の話合いをするためのものではありません。契約当日に新たな契約条件や変更を申し出ることがないようにします。

そのためには、早い段階で契約書の内容を確認しておくことが大切なのです。また、契約の際、契約書をはじめ、様々な書類への押印は、書類の内容を確認して必ず自分で行いましょう。印鑑を預けての押印は大変危険なことなのでしてはいけません。契約書面への押印が終わったら買主から手付金を受領します。

余裕をもって引渡しの準備をする

契約の締結が終わったら、引渡しの準備に入ります。実測売買の場合は速やかに測量の手配が必要です。引渡し時に残置物があるとトラブルになりますので、処分すべきものは早めに処分することが必要です。

売買契約をした売主の最大の義務は、土地・建物を契約で約束した状態で引き渡すことです。約束した状態の土地・建物を約束の期日までに引き渡すことができないときには、 契約違反になり、債務不履行責任を負うことになってしまいます。

居住中の建物の売却のときは自身の引越しもあり慌ただしくなるので、 引渡日の間際になって慌てることがないように、早め早めに準備します。 次の準備事項のうち、専門家への依頼が必要なものについては、媒介業者が紹介、手配等の手伝いをしますので、担当者としっかり打合せをしておきます。

ステップ6:決済・引渡し

司法書士が書類に不備がないことを確認したら、売買代金の授受・所有権移転登記・不動産の引渡し

代金決済と引渡しの注意点

約束した状態の土地・建物を引き渡す準備はできましたか? 権利証等の登記書類の準備は大丈夫ですか? 次は、いよいよ不動産取引で最も大事な「決済・引渡し」です。当日は、司法書士が立ち会い、媒介業者が進行役を務めます。

買主の引渡し前の物件確認には売主も立ち会うのが原則ですが、やむを得ない場合は売主は立ち会わずに、媒介業者が代わりに立ち会うこともあります。

買主は、契約時の状態または約束した物件の状態になっていることを確認します。約束していた補修工事が未了等の未履行のものがあり、約束した引渡日に引渡しができないときは、買主の承諾を得て引渡日を延期するか、引渡し後に工事を行う覚書を交わして引渡しを行うことになります。

一つ間違うと大きなトラブルになります。早めに引渡し準備をして、書類の不備、未履行の工事等がないようにしなければなりません。

司法書士の立ち会い

買主は代金の支払いと同時に土地・ 建物の引渡しを受けて、所有権を確実に自分のものにする必要があります。

そのため、決済・引渡しには所有権移転登記手続きを行う司法書士が必ず立ち会い、売主から提出される登記書類を確認します。買主のための登記手続きを行うことから、この司法書士は買主側が用意するのが原則です。

売主には、買主の完全な所有権を阻害する一切の負担を除去抹消する義務がありますので、所有権移転登記書類だけでなく抵当権等の抹消書類一式を買主に引き渡します。登記書類に不備があると決済ができなくなってしまいますので注意しましょう。 買主は、司法書士による書類の確認ができてから残金を支払います。

売却した後の税金について学ぶ

売却が無事に終わりホッとしたところですが、最後にもう一つだけ、譲渡所得税の税務申告、所得税控除のための書類の準備等が残っています。不明な点は税理士、税務署の相談窓口等で確認します。

土地・建物の譲渡所得には所得税と住民税、更に復興特別税が加算されます。譲渡した年の 1 月 1 日に おける所有期間が 5 年を超えるときには長期譲渡所得として所得税・住民税合わせて約 20%、それ以外の場合は短期譲渡所得として約 39% の税率で課税されます。

居住用財産を譲渡して譲渡益(利益)があるときには、3,000 万円の特別控除、更に 10 年を超えて所有しているときには軽減税率が適用されます。譲渡所得の計算に際し、建物の取得費に注意が必要です。建物のように使用または期間の経過により価値が減少する資産は、[取得価額]から[減価の額]を引いた額が [取得費]になります。5,000 万円で購入した住宅を 10 年後に 5,000 万円で売却した場合、譲渡益 0 円 ではないことに注意します。

譲渡所得の計算式

不動産を売却したことによって生じた所得を譲渡所得といいます。譲渡所得がマイナスの場合には課税されることはありません。

譲渡益に対する税率は他の所得と分離して、分離課税の税率となり、対象となる不動産の用途や所有期間により税 率が異なります。

契約不適合による売主の担保責任

売主は、売却した土地・建物に買主が注意しても知ることができなかった欠陥や、種類、品質等に関して契約の内容に適合しないものがあった場合、 特約で免責していない限り、契約不適合(担保)責任を負うことに留意しておきます。

引き渡した目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであることを、契約不適合といいます。

例えば、引渡し後に、土地が土壌で汚染されていることが判明したり、建物の土台がシロアリの被害を受けていることがわかったりした場合です。 引き渡した目的物が契約不適合であった 場合については、民法上、売主には4種類の義務・責任があります。

①追完義務…買主は、目的物の修補、代替物の引渡し、または不足分の引渡しによる履行の追完を行わなければなりません。②代金減額…買主から追完を求められても追完を行わないときには、契約不適合の程度に応じて、買主からの請求によって代金が減額されます。 ③損害賠償義務…引き渡した目的物に契約不適合があり、そのために買主が損害を受けたときには、売主は損害を賠償する義務を負います。④契約解除…買主から求められても追完を行わないなどの場合には、売買契約が解除されることもあります。

■瑕疵担保責任の廃止 2020年 4 月 1 日に改正民法が施行される前は、引渡しを受けた後に気付いた欠陥については、売主は瑕疵担保責任を負うとされていました。瑕疵担保責任では、修補請求は認められず、また、解除をすることができるのは、 瑕疵(欠陥)によって契約の目的を達成することができない場合に限定されていました。

しかし、改正民法施行によって、瑕疵担保責任が廃止され、契約不適合責任の制度が導入されました。契約不適合責任においては、引渡しを受けた土地や建物に欠陥が見つかった場合、欠陥の修補などの追完を請求することができます。また、契約の解除は、目的を達成することができない場合に限定されず、修補などを求めても売主がこれに対応しない場合であって、売主に相当の期間を定めて催告をしても期間内に売主の義務が履行されないときは、契約不適合が軽微なものでなければ、契約の解除ができるようになりました。改正民法では、引渡しを受けた土地や建物に欠陥があった場合について、買主がより手厚く保護されています。

■危険負担と民法改正契約を締結して引渡しをする前に、契約をした建物が、売主・買主の責めに帰さない理由によって大きな被害を受けた(例えば、地震によって建物が滅失したり、損傷を受けてしまったりした)場合、売買代金がどのように扱われるのかというのが危険負担の問題です。

民法改正前は、民法上は、建物が滅失し、損傷を受けても売主は売買代金を受け取ることができるとされていました。しかし、民法改正によってこのルールが改められ、建物が滅失すれば代金を受け取ることができず、また、損傷を受けたときには損傷の程度に応じて代金が減額されるようになっています。ただし、引渡しをした後に滅失や毀損が生じた場合には、売買代金の全額の支払いを受け取ることができます。

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