2017年生産緑地法改正

2017年の生産緑地法改正における主な改正点

2017年の生産緑地法改正が生産緑地2022問題対策として生産緑地の保全を強く意識したものであることには違いありません。主な改正点となるのは、以下の3つです。

  • 条例で生産緑地地区の指定面積を一律500平方メートル以上から300平方メートル以上に引き下げることが可能になった
  • 生産緑地地区内で農産物の直売所、農家レストランなどの設置が可能になった
  • 2018年4月施行の「特定生産緑地」制度が創設され、指定を受けることによって生産緑地の買取り申出を10年間延期できるとともに税制面の優遇が継続され10年ごとの更新も可能となった

これら3つについて詳しく見ていきましょう。

まず、指定面積の引き下げについてですが、これは都市農地に対する捉え方が「都市にあるべきもの」へと変わった中で、都市部で農地を保全しやすくするための改正になります。農地面積が単独で300平方メートル以上か、100平方メートル以上の農地が近くに複数ある場合にそれらがまとめて300平方メートル以上になるようなら生産緑地の指定を受けることができます。ただし、自治体の判断に委ねられる部分もありますので、各自治体への確認が必要です。また、これまでまとめて500平方メートル以上の農地が生産緑地の指定を受けている場合に、「道連れ解除」のような事態が起きていました。例えば、Aさんのところに300平方メートルの農地があり、隣のBさんのところに400平方メートルの農地があったとします。AさんとBさんの農地をまとめることで生産緑地地区の指定を受けることができますが、Aさんが300平方メートルの生産緑地を指定解除して売却すると、Bさんは単独では指定条件の500平方メートルを満たすことができなくなります。その結果、Bさんが営農を継続したくとも指定が解除されてしまいます。これが「道連れ解除」の実態です。2017年の生産緑地法改正で生産緑地の指定要件が300平方メートル以上まで引き下げられたことによって、Bさんのような方でも生産緑地を維持できるようになりました。改正による引き下げは、こういった生産緑地で起こっていた道連れ解除の防止効果も期待できるのです。

次に、生産緑地地区の建築規制の緩和についてですが、これによって生産緑地地区内で農産物の直売所、農家レストランなどの設置が可能になりました。規制緩和前はビニールハウスや温室、農産物の集荷施設、貯蔵所、処理場、資材の保管施設、休憩所などに限られていました。基本的に農業経営に「必要な施設の建物」に限られていましたが、2017年の生産緑地法改正によって生産緑地で産出される農産物を活かして「プラスをもたらす」施設もOKとなったのです。ただし、生産緑地の保全に無関係な施設の建設は許されていません。そのため、省令で規模や面積の基準が設けられています。農産物の直売所や農家レストランがOKとはなったものの、あくまでも制約つきの農業施設です。「建てられない」という縛りから完全に解放されたわけではありません。施設と耕作地の比率は施設面積の合計が生産緑地全体の10分の2以下で、耕作地は500平方メートル以上(条例によっては300平方メートル以上)を確保することになっています。都市農家にとって、生産した農作物の販売というのは収益の面でもとても重要になってきます。直売所や農家レストランがOKとなっても規制が多くて収益につながらないのでは意味がありません。「それならば宅地化を……」と考えることも十分にあり得ます。

そして、「特定生産緑地」の創設なのですが、これは良好な都市環境や生活環境の確保に必要な生産緑地を保全するためのものです。特定生産緑地の指定を受ける場合には、生産緑地指定後「30年経過時までに」申請をしなければいけません。そうすることで引き続き農業の継続が義務付けられますが、税制面の優遇を10年延長することができます。その後も、10年ごとの判断でその都度指定を受ければ、さらに10年ずつの延長も可能です。固定資産税や都市計画税もこれまでと同じように農地評価・農地課税として扱われることになり、一見すると都市農家への救済措置のように思えるかもしれません。ただ、特定生産緑地の指定を受けなければ、固定資産税・都市計画税は宅地課税となります。指定を受けることで、相続税・贈与税の納税猶予を新たに申請することもできるのですが、その場合にはあくまでも終身営農が義務付けられることになります。さらに、2022年からは特定生産緑地のほかに3種類の生産緑地、つまり、買取り申出をおこなった生産緑地と指定後30年を経過した生産緑地、指定後30年を経過していない生産緑地のあわせて4種類が存在することになります。同じ生産緑地でも税制上の扱いが異なりますので、こちらも注意が必要です。

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